“mezzotint



 追跡者を撒くために、私は廃屋へと逃げ込んだ。
ヤツは私を見失った様で、しばらく埠頭のあたりを
うろついてから、スパイブリッジを渡っていった。
 なんて事だ!あの追跡者もスパイだったとは。こ
れでは私が対岸へ逃げ込んでも、ヤツと鉢合わせす
る可能性が高い。確実に安全だと思っていたが、別
のルートを探さなくてはいけない。       
 橋のかかっていない河を、孤立無援で渡りきるに
は、どうすればいいのか。私には一つだけプランが
あった。危険な方法であっても、抜け目無くやって
のけるのがスパイというものだ。        
 あたりに誰も居ないのを確認してから、私は地下
へと通じる路地へ向かった。