“mezzotint




 その昔、この国に一人の詐欺師が居た。彼女は真実を
視る事ができると触れ込み、怪しげな未来を語った。多
くの人が彼女の語る未来を信じて、対価として金品を渡
した。                      
 やがて彼女は裁判にかけられた。詐称、教唆、名誉毀
損、等々。二つの法に照らし合わされ裁かれるはずが、
彼女は領主、司祭、裁判官、傍聴人すら騙してみせた。
彼女は無罪を勝ち得た。              
 膨れあがった嘘は彼女を神の使いへと押し上げた。さ
らなる富、さらなる名声、さらなる盲信者を手に入れた。
しかし彼女も、彼女の嘘も、時には勝てなかった。彼女
は老衰で死に、彼女の嘘はすべて解体された。    
 人々は怒り、彼女の家を、墓を、死体を焼き捨て、そ
の名前を忘れた。                 
 今ではこの肖像画を残すのみである。